植物民俗学 香りの旅 マダガスカル/ピンクペッパー

   

植物:ペッパー・ピンク、ペッパー・ブラック、ラヴィンサラ、ジンジャー、バニラ、イランイラン、シナモン、クローブなど

栽培地域:マダガスカル アンバンジャ州

栽培パートナー開始時期:2021年

栽培面積:20~30ha

 

熱帯雨林と奇妙な造形の風景。キツネザルとカメレオン、バオバブ、そして驚くほど多様な芳香植物。生物多様性のホットスポットでもあるマダガスカルで、貧困と海外からの搾取に脅かされている固有種。私達の民族植物学の旅は、人間の生活の基盤を確保しつつマダガスカルの自然の多様性を維持する方法を示すプロジェクトにつながっています。

 


ファファラは島の北部にあるオーガニックフェアトレードプロジェクトのパートナーです。それは、インフラ、教育、医療の分野における大きなコミットメントによって特徴づけられます。

 

 

グランド イル、大きな赤い島 –

首都に到着すると、最初に黒い島が現れます。

黒はアンタナナリボ市の夕方の空で、黒は街のスモッグの色です。

また、黒は島の中央部の原生林を焼いた伝統的な焼き畑の色でもあります。短期間肥沃になった焼き畑農業の後、層が薄くて栄養の少ない土壌が浸食され、赤いラテライト(紅土)が残ります。これにより、「イル・ルージュ(赤い島)」というあだ名が付けられました。

 

 

世界で4番目に大きな島マダガスカルは、生物多様性の楽園として知られていますが、政治的および生態学的に問題のある国です。貧困は島の豊富な自然を脅かし、森林は稲作と畜産のために焼き払われ、ローズウッドなどのジャングルの巨木は違法に海外に輸出するために伐採されます。家族が飢えているとき、自然保護について考える余裕があるでしょうか?私たちの植物民俗学の旅では、島の北部にある湿度の高い熱帯地域を訪れました。2000 を超える小規模農家が所属する協同組合との希望あるプロジェクトです。生活基盤を整えながら既存の森林を保護する農業の形態(アグロフォレストリー) *によって、生物多様性を維持しつつ地域全体を持続可能にサポートする方法を示しています。

*アグロフォレストリー:樹木を植栽し、樹間で家畜・農作物を飼育・栽培する農林業

 

山を抜け、不毛の赤い谷や平原を通り抜ける 20 時間のドライブの後、風景が変わります。空の青さを映す川の流れ、巨大なマンゴーの木陰、道端の光るカメレオン、人々のカラフルな模様の衣装など、あらゆる色が目に飛び込んできます。

 

「Salut, vazaha! こんにちは、白人!」

誰かが私達に向かって叫び、車窓は最終的にエデンの園のように緑の溢れるサンビラーノ川流域に到着しました。気持ちの良い海風が届くほどに海岸に近くはないので、地球の湯気のような湿気に包まれます。モザンビーク海峡からそう遠くない、地方の町アンバンジャ周辺の地域は、緑豊かな植生が特徴です。イランイランの木がレモンイエローの果実を実らせています。ほぼ毎日のように雨が降る熱帯の湿度は、人口の約 60% が住む場所の農業にとって理想的な条件を提供します。最も重要な作物はカカオであり、さまざまな芳香植物もここで栽培されています。もちろん、ファファラのパートナーである有機フェアトレード協同組合のグラン・クリュ精油:イランイラン、ペッパー・ピンク、ラヴィンサラ、ベチバーなども栽培されています。

 

 

 

「Grand Cru/グラン・クリュ」 - 社会的または環境的付加価値を特徴とする、特に高品質なオーガニックエッセンシャルオイルとオイルに対するラベル

 

植え付けと収穫は通常女性の仕事であり、男性は耕作と蒸留所周辺での作業を行います。オーガニック プランテーションで働く事のメリットは1 日 8 時間の規則正しい週 6 日勤務と平均以上の賃金だけではありません。イランイランの収穫に15年間従事しているスタッフは「トイレやシャワー、収穫ゾーンの近くに位置するクリニックがあるなど労働条件、福利厚生が良い事、そして共同決定の優れた文化と、経営陣に直接、質問や情報を求めて質問する機会がある事。」が気に入っている点だと教えてくれました。

 

協同組合の収入の 1% が基金になります。この基金は村の学校と衛生施設の改修資金にあてがわれるだけでなく、村人に有機米栽培のトレーニングを行い、家庭菜園の収量を増やすのに役立つ栽培専門家にも使われました。付属の医療センターは、周辺の村の 30,000 人に医療を提供します。従業員は医療のために賃金から少し出資する代わりに、必要に応じて従業員とその家族が安価に医療を受けるという、健康保険と同様の恩恵を受けられます。マダガスカルでは一般的ではないシステムです。

 

有機栽培に加えて、このプロジェクトには重要な取引パートナーシップも含まれています。島の交通の不便な栽培地域でシナモン、バニラ、ジンジャーなどを栽培している約 2000 の小さな有機農家から直接公正な収穫物を購入することです。購入と価格の保証を通じて、芳香植物の栽培による彼らの収入を確保し、搾取的な仲介者から保護し、貴重な木材の違法輸出、キツネザルの狩猟、または焼畑と牛の繁殖に代わる選択肢を提供しています。

 

 

 

作物と熱帯雨林のオーガニックミクスチャー文化

 

訪れたペッパー・ピンクの農園では、生物多様性の夢が実現されました。コショウ科のペッパー・ブラックとは異なりウルシ科のペッパー・ピンク(学名:Schinus terebinthifoliu/シヌス テレビンチフォリウス)は、熱帯雨林の真ん中で育つと考えられています。一見しただけでは、この農園がジャングルではなく、アグロフォレストリーの森の真ん中にあることに気が付きません。そこでは、カカオ、マンゴー、野菜の隣にイランイランが自生しているなど、多種多様な有用植物がたくさん育っています。柑橘系の果物とパパイヤの間にピンクの果実が付いた大きなペッパー・ピンクの木が育っています。丁寧に手で収穫した後でブラシを使って選別されます。この手間と努力でフェアトレード認定を受け、数人の女性の収入が確保されました。コショウを乾燥させ、水蒸気蒸留すると、フローラルノートの花束のような、オリエンタルな香りのエッセンシャルオイルになります。

 

 

「良い葉」があふれる森

 

マダガスカルの農学者ミミは、オーガニックフェアトレード プロジェクトのために 3000 本のラヴィンサラの木を植えました。 ラヴィンサラ(Ravintsara) は マダガスカル語で「良い葉」を意味し、そのエッセンシャル オイルはマダガスカルで、特に風邪の際に重宝されています。巨大な樹木が日々伐採されてしまうので、若いラヴィンサラの森を作り土壌を浸食から保護しています。香りのよい森は蒸留所からわずか 20 キロしか離れていませんが、壊滅的なありさまの道路の状況により、蒸留のためのラヴィンサラの葉を運ぶことは一日がかりの困難な旅となります。

 

 

バニラ:ミッション「ブラックゴールド」

 

 

島で最も有名なスパイス工場を訪問できなかったのは残念でした。有機バニラ生産者のいる辺鄙な地域までは 4 日間かかり、徒歩と一部ピローグ (木造船) で移動する大変な旅になるからです。世界で 2 番目に高価なスパイスが農家の家族から引き取られる準備が整ったときから危険なツアーが始まります。多額のお金を現金で受け渡さなければならない場合は、警戒が必要です。避けられない夜間行軍は特に危険です。政治情勢の悪化が続くため、犯罪は増加の一途をたどっており、島の「闇金」から多額の金が盗まれる可能性があることはよく知られています。フェアトレードでは、公正な交換と現実的な視点を示すことがさらに重要です。

 

 

橋渡し

 

教育を通じた視点は、ここマダガスカルの私たちのプロジェクトにとって非常に重要なもう一つの側面です。橋を修復したことで、現在では雨季でも村の子供たちが学校に通うことができるようになりました。そして私たちが訪問したとき、子供たちの群衆が私たちに「Merci aux amis farfalla! ファファラ、友よありがとう!」と言ってくれました。

 

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