2022.3.1|ファファラ精油物語 鷺島広子/第1回「高山(こうざん)マツ」


  

 

植物にとっての最適な産地から高品質な精油をお届けしているファファラ。

ファファラの精油を毎月1種類ずつご紹介しています。

 

 

 画像出典:Wikimedia Commons

植物にとっての最適な産地から高品質な精油をお届けしているファファラ。ホリスティックアロマサロン H【a∫】(アッシュ) 主宰のアロマセラピスト鷺島広子さんにファファラの精油を毎月1種類ずつ紹介していただきます。第1回目は「高山(こうざん)マツ」。誰もが知っているメジャーな精油ではありませんが、アルプスの最も標高が高い地域に生息する強靭な樹木のエッセンスです。

 

 

〇高山(こうざん)マツ(学名:Pinus cembra 科名:マツ科 抽出部位:枝葉)

ファファラ アロマケアカテゴリ―;守られて

 

 

嗅いだ瞬間、体の中を風が駆け抜けていく衝撃にはいつも驚かされます。 そして胃から下腹部にかけて何かどっしりした、確かなものを残していってくれる感覚。

 

数ある木の香りの中でもマツは、その軽やかさと安定感のバランスが絶妙だなと感じますが、高山マツの香りは特にその感覚を覚えます。しっかりと地に足をつけた状態で、心を高みに羽ばたかせてくれる感じ。

 

丁寧に採取された精油には、単なる化学成分だけではなく、その植物が生きてきた土地や水などの環境、自らが作り上げてきた空間のエネルギーをも含む様に思います。

 

高山マツはその名の通り標高の高いところで生育し、ゆっくり、どっしり成長するが故に、高地で氷河期をも乗り越えられた数少ない種と言われます。この香りが持つ特徴もそんな生育環境、種として生き残ってきた軌跡とも関係しているのかもしれません。

 

森の香りともいわれる成分α-ピネンを25%程含むこの精油は、芳香浴では空気をキレイにしてくれる作用があります。また呼吸器系に作用し、気道を通してくれる作用、さらには木の精油特有の体内のさまざまな鬱滞(例えば痰、リンパの流れの滞り、など)を解消してくれたりもします。また気分を活性化しリフレッシュしますが、自律神経系の副交感神経を優位にし、程よくリラックスさせてくれる作用をもっています。

 

日本でコロナ禍となり丸2年が経とうとしています。

 

アロマセラピストとしてセラピーや講座を15年以上してきて、香りの大切さやその力は充分に感じているつもりでしたが、ここ数年程その必要性を強く求めたことはなかったかもしれません。植物の香り成分がもつ抗菌・抗ウィルス作用はもちろん有用ですが、それと同じくらい、もしくはそれ以上に“香りをかぐ“という行為による心身の反応の大きさ、有用性の高さを感じています。外出を控える、オンラインでの仕事が多くなる、という生活の変化、人との接触が減ったことでの心身への影響はかなり大きく、それによるストレス性の症状に悩まされる人も増えました。様々な情報が飛び交い、溢れる情報の中での不安、何が正しいのか、どうすればよいのか、と翻弄されてしまう状況も多いように思います。

 

そんなときに、自身が心地よいと思う“香りをかぐ”ことは、自分自身の感覚に意識が向き、自分の心と向き合うきっかけとなり、そのことで気持ちのスイッチが切り替わることもあります。さらに香りの作用による免疫力の向上、自律神経系やホルモンのバランスを整えることへも繋がります。

 

このコラムを担当させていただくにあたり、数ある精油の中でこの高山マツを最初に選んだのは、呼吸器系への作用、向精神性、心身ともに鬱滞を取る働きなどの作用に加え、過酷な環境をも乗り越え生き残ってきた背景が、今のこの社会状況に合っていると思ったことも理由の一つです。

 

種は異なりますが日本でも多くの松が古くから大切にされてきました。元旦に神様をお迎えするための松飾り、松竹梅、松明(タイマツ)に使用されてきた歴史、人々の暮らしの中で時には神との関係性、時に暮らしの必需品、として身近な存在でもあります。

 

燃えやすいテレピン油を含む独特の香り、逆境の中、嵐の中でも、身体の中にあるいは心に、ぽっと火を灯してくれるような香り。その火種は尽きることなく小さくなっても力強く燃えていてくれる、その安心感は、古いにしえからの記憶とも結びつき、この様な状況下でも私たち命の薪をくべてくれているような気がします。

 

ブレンドではレモンやグレープフルーツなど少し苦みがある柑橘系との相性がよいでしょう。心身が疲れたとき、自分のエネルギーが不足していると感じたとき、身体の精気の源と言われる丹田で、ぜひこの香りを感じてみてください。

 

次回はネロリの予定です。

 

 

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鷺島広子(さぎしまひろこ)

 

ホリスティックアロマサロン H【a∫】(アッシュ) 主宰

葉っぱのうらがわ 代表

アロマ&ハーブセラピスト

 

12年間会社員として大手メーカーに勤務。システムエンジニアとして主にコミュニケーションロボットなど人の感覚に関わるシステム開発に携わる。自らの経験から植物療法の有用性を強く感じ、また人から人へ直接伝えていける環境を求め、2006年にプライベートサロンを開設。同時に様々な植物療法に関わるモノづくりを行うメーカーとの関わりが増え、2013年より植物と人との関わりをテーマにした場づくりをメインに行う“葉っぱのうらがわ“を立ち上げる。アースデイ東京やフジロックなどの野外イベントでも確かな材料で暮らしに役立つアイテムを作るワークショップを多数実施。「さとやまハーバルライフ」、「ボタニカルヒーリング」など、植物を直接感じ、暮らしに役立てるフィールドワークを行う。

サロンでは植物の恵みを心身の美と健康に役立てる季節のスキンケア、セルフケアアドバイス、インド式ヘッドマッサージセラピスト養成などの講座を実施、葉っぱのうらがわでは商品のコーディネートやイベント企画を行っている。東京都の国分寺市にある「暮らしを耕すマーケット」で、ファファラをはじめとするアロマやハーブのブランドを取り扱い、セルフケアアドバイスと共に販売中。2019年11月よりファファラのカテゴリー別講座を担当。